北十字とプリオシン海岸

本や映画やアート感想

「好きな映画は何か」と聞かれたらpart1

わたしは取り立てて映画好き、本好きというわけではないのですが、人類を映画好きとそうでない・本好きとそうでない、に分けたときに、映画好き・本好きになるのだろう、とは思っています。(本当に映画好きな人って一日1本ペースとかで観ててすごいですよね。わたしは観ても週に2~3本…)

ということで、人に「映画好きなの? 何が好き?」と聞かれる機会もあるのですが、好きな映画ってその時々の気分しだいで変わるし、相手によっても答えを変えることもあるので(その人の知っていそうなタイトルを答えるようにしたり…)、何が好きなのかって自分でもよくわからなかったりします。

 

2回以上観たことのある映画

そんな中で、自分にとって「好きな映画は何か」を考えるためにも、「好き」の判断基準を「複数回(2回)以上観たことがある」というところで設定し、自分の好きな映画について考えてみることにしました。

 

3回▼パルプ・フィクション

パルプ・フィクション [Blu-ray]

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アカデミー賞脚本賞も受賞した監督クエンティン・タランティーノの大出世作。意図的に時系列をばらばらにつなぎ合わせ、オムニバスのような構成になっています。もう、なんていうかとにかくクール。かっこいい。何の意味もない無駄話の連続でさえかっこよくてスタイリッシュ。ブルース・ウィリス、ユマ・サーマ ン、ジョン・トラボルタサミュエル・L・ジャクソンなどなど、出演者が豪華な割に、チープなB級アクションなのも見どころ。超真面目な顔でふざけたことをしているのが笑いを誘います。特に大好きなのがこのシーン。


Pulp fiction-Buch&Marcellus - YouTube

ボクサーのブッチ(ブルース・ウィリス)がいかさま試合で負ける予定だったところを何と相手をなぐり殺し、大金を賭けていたマフィアのボス、マーセルスの怒りを買って追われる身に。車での逃走中、信号待ちをしているところへ、ちょうど信号を渡っていたマーセルスと鉢合わせ。ブッチは慌てて近くの質屋へ逃げ込み、二人は店内で大乱闘を繰り広げます。するとその店のオーナーが実はホモで、二人を拉致し、ホモ仲間の警官を呼んで楽しもうとするわけです。先に選ばれたのはマーセルス。ブッチは彼が襲われている間、逃げようとしますが、気が変わって救出することに。ブッチが駆け付けた時、まさにマーセルスがおかまを掘られている最中でした。

ブッチに救出され、ホモ2人をぶっ倒し「これでお前との関係はチャラだ」と、格好よく言い放つ処女喪失後のマーセルス。格好ついてない、ついてないよ! って突っ込みが追い付かない。マジで腹抱えて笑いました。

 

3回▼羊たちの沈黙

人食いレクター博士という新しい悪役を生み出したサイコスリラーの傑作。アンソニー・ホプキンスジョディ・フォスター主演で、第64回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞を受賞しました。個人的にはFBI捜査官のクラリスジョディ・フォスター)とレクター博士アンソニー・ホプキンス)の2人の間にそこはかとなく漂うお互いへの尊敬や愛情が入り混じった雰囲気に何となくドキドキさせられました。

ホラー映画やサスペンス映画なぞほとんど観たことのなかった高校3年生の時に(この時は猟奇殺人というものが世の中にあるということさえ、さらにそれがエンターテイメントとして映画や小説の題材になるということさえ、知ってはいたものの理解をしていなかった)何となくレンタルしたのですが、当時は流血する映画に慣れていなかったこともあり、怖くて途中で離脱しそうになりながらも、あまりの面白さに最後まで観た後は続シリーズの「ハンニバル」「ハンニバル・ライジング」まで何のかの行き着きました。


Hannibal Lecter Escapes Part 2 - YouTube

何が面白いかって、このレクター博士の脱獄シーン。(確か別の収容所だかどこかだかへの移送中だった気がする)警察よりも極悪人のレクター博士に同調し、捕まるな、捕まるな、と内心応援してしまう。エンタメ度MAXのこのシーンで、博士の悪役キャラクターとしての魅力は最高潮です。インテリとしてだけでなく、殺人鬼としても独自の美学を持っている彼らしい手口にしびれます。

 

3回▼戦場のメリークリスマス

戦場のメリークリスマス [DVD]

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大島渚監督の言うまでもない名作。ビート武×坂本龍一×デヴィッド・ボウイ出演と今ではとうてい実現不可能なキャストもさることながら、名曲「戦場のメリークリスマス」が生まれた作品でもあります。

坂本龍一扮する陸軍大尉のヨノイが、ボウイ扮する捕虜の陸軍少佐セリアズに対して同性愛的な感情を抱く様子に正直萌えました。この二人がどこでどうしたら幸せになれたんだろうかとしばらく妄想が尽きなかったもの….。

最後、武がカメラにドアップで「メリークリスマス、ミスターロレンス!」と叫ぶシーンが有名ですが、わたしが涙腺崩壊したのは、ラストの次に名シーンとして挙げられるこのキスシーン。ヨノイから兵器に詳しい者の名簿を渡すように命じられた俘虜長がそれを拒否し、ヨノイが彼を処刑しようと刀を持つのですが、セリアズが阻止します。ヨノイを殴るでもなく、俘虜長をかばうでもなく、彼はキスをするわけです。そのキスは、ヨノイが内心抱いていた西洋への憧憬の最たる ものの象徴のようで、日本男児として自身の文化に誇りを持っていた彼をひどく動揺させます。


Merry Christmas, mr. Lawrence: The kiss - YouTube

このシーンで流れているBGMのタイトルが「Sowing the seed」というのですね。セリアズはヨノイの心に、その場にいたすべての人の心の中に種を蒔くのです。西洋と東洋の価値観がここで混じり合い、彼らが本当の意味で和解しあうための種です。種はぐんぐんと育って花を咲かせます。それがもう、たまらん…!と書いているうちにまた観たくなってきた。

 

と、長くなったので、残りは後日。

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