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ルドルフ・シュタイナー展に行ってきたよ!

今日は外苑前のワタリウム美術館で展開中のルドルフ・シュタイナー展  天使の国へ行ってきました!

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Rudolf Steiner Das Reich Der Angeloi

 ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)はゲーテ研究家、人智学の創始者、哲学者、そして教育者として日本でもよく知られています。今回の展覧会ではシュタイナーをさらに知るための3つのアプローチを用意しました。

 

展覧会へ行く前のわたしのシュタイナー知識は、「ドイツ人」「神智学だか人智学だかの偉い人」という程度だったので、ネットで初歩的なシュタイナー用語(エーテル体、アストラル体とか)を少しばかり予習してから臨みました。

結論から言うと、予習は大正解。ある程度の前知識がないと意味不明なところも多々あります。もちろん解説はありますが、予習前のわたしの知識程度だと、恐らくぎょっとします。

 

展示会の構成としては大体下記のとおり。※会場パンフを参考にしています。

1)黒板ドローイング

シュタイナーが講義を行う際に内容を説明する目的で黒板に書いたドローイング集。講義の内容を深く理解するために、弟子たちがあらかじめ黒板に黒い絵を貼って保管したものだそうです。

2)第一ゲーテアヌム

シュタイナーが建築した神秘劇場(って何だ?)の図面や動画など。1913年に着工され、1922年に何者かによって放火され焼失。展示には、第一ゲーテアヌムのガラス窓のドローイング集もあり、天使や星のモチーフが多かったです。天と地、天使と人といった二元論的なテーマが中心でした。

3)第二ゲーテアヌム

第一ゲーテアヌム焼失の後、シュタイナーがデザインにとりかかった建築物。彼は建築物を「この世からあの世への通路」として考え、機能性よりも、そこに込める人の霊性を重視していたのだとか。あとは、指輪やペンダントなど、シュタイナーのデザインしたアクセサリー集も面白かったです。「材料の加工のやり方から形態が生じるべき」という主張のもと、可逆性のある金属(純度の高い銀や金など)から作られたそうな。

……と、幅広く取り扱っているのですが、あまりたくさん展示品があるわけではないので、 神智学人智学を深く理解したいというよりも、広く浅くシュタイナーを知りたい、という人(つまりわたし)におすすめなのかも。「建てない建築家」こと坂口恭平氏の第二ゲーテアヌム立体ドローイングとかも楽しめました。ただ、深く理解したい人にはやや物足りないかもしれません。

 

さらに「広く浅く知りたい」な人に勧めたい理由がもう一点。本展覧会が一般的な感覚で受け入れやすい「スピリチュアル」な部分と、一般的な感覚ではちょっと距離を置きたくなる「オカルト」な部分のバランスが絶妙であるように思えたところです。

「スピリチュアル」的な部分というのが、「自身の内的な働きを意識することで宇宙と一体化できる」とする考え方であるとすれば、「オカルト」的な部分とは、例えば「宇宙の意志によって人間界は操作されている」とする考え方となるのかな、と思います。あくまでわたしの解釈ですが…。

そして恐らくほとんどの人が前者に対しては共感ができると思います。例えば禅、ヨガなどを通して。一方で後者は「意志」の有りどころが自分自身から離れた場所にあるので、多くの人が不可解なもの、自分とは全く別世界のものとして捉えるのかな、と。特に日本人はキリスト教のような人格神を信仰する宗教が一般的でないのでなおさらですね。

で、今回のシュタイナー展は、その両方をバランスよく配合した内容になっているという印象を受けました。といっても、シュタイナーの著作を読んだわけではなく、展覧会を通してわたし自身が感じたことの、ただの印象に過ぎませんので、人によっては「100%オカルトじゃん」と思われるかもしれませんね…(そこまで思う人はおそらくシュタイナーに近づかないと思いますが)。ただ、「知ること」と「共感すること」はまた別のことなので、その深淵な世界に触れるだけでも楽しいですよ、きっと。

 

ちなみにショップでシュタイナーの著作があったので買ってきました。シュタイナー四大主著の一つ『神秘学概論』です。翻訳はシュタイナー研究の第一人者である高橋巌氏。ある程度読んだら感想文を書こうと思います。

神秘学概論 (ちくま学芸文庫)

神秘学概論 (ちくま学芸文庫)

 

最後に、あくまで個人的な意見ですが、日本でも行われているシュタイナー教育(という芸術英才教育)については割と距離を置きたい派です。自我さえ未分化の状態で、内界と外界との一体化を幼い頃から訓練として身に付けさせる方針に共感ができず……。子どもたちには、自我が育った後に、自分の意志で外界と向き合って欲しいなあ…。※何度も言いますがあくまでわたしの個人的な意見です。

 

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